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母国語の重要性

本会副会長 木下 博夫
世界政情の不安定さが懸念される時代が続いている。これまでも決して国民が安心できる状況が達成・実現できる局面は多くはなかったとも言えるが、現代ほど各国が共通して安定にもどかしい社会環境にある事もまれではないか。
その原因となる要素はいろいろあると言えるが、重要な要素としては技術革新の乱用からくる文化的水準の安易、幼稚さに起因するものが多いと考える。とりわけテレビ・スマホ等による母国語に対する配慮の欠如がある。
役人の課長補佐時代、海外視察のためヨーロッパに出張した際の事を思い出す。イタリアのバス車中で隣り合わせたイスラエルの小学校教師に対して学校教育で重点を置いている教科・分野は何かを尋ねた際の返事を今も強く記憶している。
答えは「国語(文法)」、「論理」、「歴史」と明確に答えてくれた。イスラエルの建国の経緯、現状を見る時、我国が第二次世界大戦の敗戦を経験したとはいえ、大きな国際間の争いには関係してこなかった恵まれた歴史的な立場にあったことの違いを国民が強く意識してこなかった環境を自覚した。
今年は世界的に異常気象が続く。日本列島に住み、戦争を経験しないで生きてきた世代としては、この国の風土からくる恵まれた環境、そしてそれを基盤に培われた日本文化の豊かさ、素晴らしさに喜びを感じる。とりわけ使われている言語、表現される幅の広さは他国には負けない素晴らしさがある。
和歌、俳句を例にひくまでもなく、かな、かたかな、漢字を駆使した表現ぶりをぜひ再認識していかなければならない。それは我国の文化的水準の高さ、完成の豊富さを維持していくことにもつながり、その優雅さが日本工芸の世界が持つ美しさを継承、実現していくことに繋がっていると言っても過言ではないと考える。