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「平成最後の歌会始における御製に思う」

                                  関西師友協会安岡正篤研究会会長浅利一郎
本年は今上天皇のご譲位と皇太子殿下のご即位が行われる日本の新しい歴史の始まりの年で
ある。
最近はいろいろな行事も平成最後の行事として紹介されることが多くなってきた。
その一つとして宮中の大事な行事である「歌会始の儀」が去る一月十六日に天皇、皇后両陛
下並びに皇族の方々、そして入選した十人の人々、その他内閣総理大臣はじめ招待をされた
方々が列席されて厳かにおこなわれた。
「歌会始」は鎌倉時代に始まったといわれる歴史的にも日本文化の代表的行事であり、招待
された外国人の方々もこの行事についてはあらかじめ勉強もされて出席されているとのこと
である。
今年発表された御製は『贈られしひまわりの種は生え揃ひ葉を広げゆく初夏の光に』という
御歌であった。
この御歌は平成十七年阪神大震災十周年の追悼式で遺族から献上されたひまわりの種が葉を
広げ成長する様子を詠まれたもので、この種は十一歳で震災の犠牲者になった加藤はるかさ
んが自宅で植えていた種を採取し、天皇皇后両陛下が御所の庭に播き大切に育ててこられ、
大輪を咲かせられた様子が詠われている。
ひまわりは真夏の太陽の日の光を一身に受け、人々に希望と勇気を与える花である。
そのひまわりの花を両陛下は災害を受けた多くの罹災者に夢と希望を与えるように大切に育
てられ、それを御製にされたのであろう。ご譲位される今上陛下は御代がまさに自然災害の
多い時代であったことで、国民の一人一人が罹災者に心を寄せるように、自らが率先して被
災地を訪問され、罹災者に言葉をおかけになった。そしてそのことによってどれだけ多くの
人が助けられたかわからない。
天皇は常に国民の生活が安泰であるか気をとめられる方が多く、古くは第十六代仁徳天皇が
炊煙のたたないことをご懸念され、三年間の課役を免除したり、自らの生活も質素倹約され
たという歴史がある。
皇室の方々とはこのように長い歴史の中で、常に国家の安寧と国民の繁栄を願われる独特の
文化を維持されてきたことを改めて味わってみたいと思う。