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共生の精神と克己心が人類を救う

本会会長 井手正敬
 約15年程前に、「世界人口の増、オゾン層の破壊、温暖化、異常気象、砂漠化等の
地球の危機、人間の危機が続けば、人類はあと100年以内に滅亡する可能性があり、
21世紀は人類最後の世紀になるかもしれない」と言う仮説のもと、その検証をシナリオの
形で「ジオカタストロフィ研究」がなされ、その報告書が出された。
その論拠は、すでに公表されている様々なデータや事実のみを採用し、それに定性的な推論
のみを付け加える方法でなされたと言う。結論は「シナリオは早ければ、2097年にも、
人類は滅亡する可能性を論じている」としている。
 このシナリオは、これからの約100年間を3分し、3つのステージから構成されている。
 第1ステージでは、2024年迄を、「分散と膨張の時代」と位置付け、人口が、21世
紀初頭の1・6倍の85億人へと急増し、それに伴い、経済活動の規模が拡大し、食料需要
・エネルギー需要は、夫々2・5倍、2・2倍程に増大するであろうとし、地球の収容力の
限界が、誰の目にも明らかになるだろうとする。つまり、都市機能のマヒ、異常気象の多発、
大気汚染、水質汚染、森林破壊等が増々深刻化するであろうと指摘し、先進国の人々の快適
性を果てしなく求める欲望の肥大化が、破滅の兆候を一層深めるとしている。
 第2ステージは、2057年迄を、「統合と調整の時代」とし、このまま、人類が将来世
代の犠牲の上に、快適な生活を続けていけば、地球上の資源は早い者勝ちに消費され、まだ
見ぬ子孫に、膨大な借金とゴミの山を残すであろうと指摘する。
つまり、2057年に想定されるパイを、全人類が平等に分け合うことになれば、アメリカ
人は、GNPと食料は21世紀初頭の4分の1、エネルギー消費は半分に我慢しなければな
らないとし、成長神話との訣別、市場原理の破綻は必至で、ゼロ成長社会が実現できるかが
問われるとしている。
 そして第3ステージ。この研究の最終年度2097年を迎えるのである。この時代のキー
ワードは、「科学技術は人類を救うか」である。この時代になれば、地球の定員オーバーが
実感され、努力の限界が予感され、既得権をめぐり、世界は完全に無秩序・無統制な乱世に
突入し、弱肉強食はもとより、強者同士の死力を尽くした生き残り闘争が始まり、地上には
ありとあらゆる災禍が満ち溢れ、そこには人間が生存できる環境ではなくなるであろうと指
摘する。
 そして、この報告書は、こうしたシナリオを止める手立てとして、「大量消費文明からの
脱却と貧富格差の是正、南北協調に失敗すれば、人類が更に滅亡の時期を早める」と断じ、
最終的な救済は、「一刻も早く文明の転換を図る以外になく、それを可能にするのは、我々
一人ひとりの克己心のみである」と結論付けている。
 第1ステージの終りが近付く今日この頃、この報告書は可成り、正鵠を射ているように思
えてならない。
 ジオカタストロフィ(地球の破局)とは、正確に言えば、人類の破滅であり、地球の破滅
ではない。むしろ、人類が居なくなれば、地球は早期に、本来の“青い地球”に戻ることであ
る。ジオカタストロフィとは、万物の霊長である人類が、自らの存在基盤を破壊し尽くすこ
とによる自滅であって、地球にとっては再生の出発点となると言うことであり、余りに皮肉
なことである。
 そうならない為、又我々の子孫の為、我々が今なすべきことは、共生の精神と克己心の発
揮以外にないと言うことであろう。