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「ユネスコ世界文化遺産に登録された百舌鳥・古市古墳群に想う」

                                      安岡正篤研究会会長 浅利一郎
 去る七月六日ユネスコ世界遺産委員会は大阪府百舌鳥・古市古墳群49基を一括
して世界文化遺産として登録することになった。
大阪府での世界遺産は始めてであり、地元堺市や羽曳野市はもとより、大阪府民の
喜びも大きなものとなった。
世界文化遺産は先人が築き上げた遺物を文化的にも価値が高く、世界に誇れる資産
として後世にもそれを引き継いでゆくために認定されるもので、地元ではこれを維
持管理してゆくための責任と義務がある。
 過去に日本の文化遺産が登録されたのは文化遺産が19ケ所、自然遺産4ケ所あり、
登録されると観光資源として、地元では観光客誘致にいろいろと周辺の整備にお金を
かけている。
しかしとかくこのような観光資源はそれに頼りすぎ、数年経つと訪れる人もだんだん
少なくなってしまい、折角経済効果を狙いお金をかけたものの、それが活かされない
という残念な結果を招いているところもあるとのこと。
今回の古墳群は4世紀後半から5世紀にかけて築造された当時の天皇をはじめ有力な
豪族の陵墓であり、特に仁徳天皇陵(別名大山古墳)は世界最大の前方後円墳として
考古学者や歴史家がその陵の発掘を永年求めてきたものである。
 考古学者や歴史家にすれば古代の統治形態や歴史的遺物、また社会の形成過程等に
ついて学問的考察を求めたいという願望は強く、宮内庁にもその要望を出していると
のことであるが、何分にも天皇陵であるだけに学術的成果を得るためとは言え、日本
人の皇室を大切にする伝統的思想とは必ずしも受け入れられるものではないし、又そ
のような陵墓を掘り返すようなことをすれば、先人が大切に維持管理してきた努力を
ないがしろにしてしまうことになる。
文化学術的にはその時代の日本人の生き方を知りたいと言う気持ちはあっても、天皇
陵を粗略に扱うようなことがあっては、日本国家の崩壊に至らしめる危険性があるこ
とを知らねばならないと思う。