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自ら反る

孟子は“自反”を説く。自ら反(かえ)ることは人間哲学の厳粛な根本理法の一つだ。
自ら反らざれば、自ら反(そむ)くことになる。国家・個人を問わず問題の原因は
偏(ひとえ)に外に帰することは潔くない。いかなる時も人間としての正しい考え
方は、自分の内部に第一原因を発見することでなければならない。

日本人は己のことを自分という。我々は自己として存在すると同時に他己である。
この自他が相俟って全体を構成するのだが、自己はこの全体における分の存在で
あるが故に分際であり、これを結んで自分という。
何気なく日常に使う一人称だが、日常に哲学的な言葉である。

だから自分はあくまでも全に対して、他に対する分として存在しなければならな
い。
それを弁(わきま)えぬと、分が分際から分裂の分になり、自己が分かれてしまう。
それは利己でしかない。

道を歩いていると石につまずく。面白いのはその反応の仕方で、人により千差万
別だ。
自己の迂闊を反省する者、石に腹を立てるもの、果ては石をそこに置いた人間を
恨む者まである。
日常の一小事だが、ここで自分を反省するか否かが、その人の人生を大きく左右
する。事の大小を問わず、常に自ら反る人にして真に人物として成長するものだ。

“自反尽己”即ち徒に外に向かう心を自己に反し、自己の内なる真実を磨き出す、
これが東洋学道の第一義だが、雑駁な欲望や感情ではない自己の内なる真実とい
うものは、非常に微妙なデリケートなもんだ。
我々の学道はこのデリカシーをつかむことから始まる。

『照心語録』より